歯科コラム

歯科衛生士の就職のために行われている支援制度とは

歯科衛生士が慢性的に不足している現状

歯科衛生士が慢性的に不足している現状
歯科衛生士は歯科医院にとって必要不可欠です。医科に看護師が必ずいるように、歯科には歯科衛生士という歯を守るスペシャリストが存在します。スケーリングやフッ素塗布はもちろん、PMTCやメインテナンスといった予防処置など、歯科衛生士は大切な歯を守ってくれるエキスパートなのです。また歯科衛生士は国家資格を有するため、途中で転勤やブランクを挟んでも就職しやすいなど安定した職業です。しかし今、歯科業界において、どこの歯科医院も慢性的な衛生士不足という状況なのです。

歯科衛生士不足の理由

人手不足の理由として、まず歯科医師に比べて歯科衛生士になる人が少ないことが挙げられます。平成22年度より、歯科衛生士になるために大学や専門学校で3年間の教育が必要になりました。それまでは2年制だったのが、看護師と同じ3年になり「歯科衛生士になりたい」という明確な目標を持つ人のみが歯科衛生士へ進路を決めるようになりました。そして実際、小さな歯科医院では、歯科衛生士が担う業務はアシストや予防処置などだけではありません。器具の後片付けや消毒滅菌、次の患者の準備や翌日のカルテ出しなど、医院全般のことをこなさなければならない忙しさです。そして最近では経営の問題から、遅い時間まで診療時間を延ばす傾向が見られ、その分歯科衛生士にどうしても負担がかかってしまいます。

こういった激務にもかかわらず、看護師と比べると給与面など待遇の差が顕著であることも、深刻な歯科衛生士不足の原因のひとつです。平成23年度厚労省の調査で、看護師の平均年収は30歳で474.5万円、1時間あたりの平均給与は2,340円となっています。一方歯科衛生士30歳の平均年収は360.8万円で、1時間あたりの平均給与は平均1,543円です。このあたりに同じ3年間の教育を受け、国家資格を有するにもかかわらず、看護師と歯科衛生士では大きな差がついています。原因として、歯科医院の診療報酬が医科のそれに比べて時間あたり1/7と言われており、収入面でこのような差が出てしまっていることが考えられます。また福利厚生の面でも歯科衛生士は厳しい現状に置かれており、育児休業制度や社会保険などが医科に比べて確立されておらず、結婚や出産、育児などで一度歯科の現場を離れると、なかなか復帰し辛いことも影響しています。このように歯科業界をとりまく様々な環境が、こうした歯科衛生士不足の原因に直結していると言えるでしょう。

各都道府県による歯科衛生士の就職支援制度

各都道府県による歯科衛生士の就職支援制度
こういった歯科衛生士不足という厳しい現状を改善するために、歯科衛生士が就職しやすい環境作りや支援制度が広まっています。以前は各地域が歯科衛生士の就職や復職に対する支援策を協議していましたが、現在は日本歯科医師会も歯科業界全体の課題として情報を共有、認識し、対応するための評議会を開催しています。その支援策として、教育の場で歯科衛生士の登録システムを作ること、職場環境を魅力あるものに整えること、どこでも共通の情報を手に入れることができることで就職、復職に対する受け入れ態勢を推進することが挙げられています。
歯科衛生士学校も独自のサポートを行い、就職を支援しています。東京都の新東京衛生士学校では卒業後の年数にかかわらず、転職や再就職に向けた就職指導、歯科医院への紹介を受けることができるシステムです。また一度退職したものの、また新たに再就職を支援するための「現場復帰セミナー」の実施など、学校が一丸となり、歯科衛生士の就職をバックアップしています。その他にも京都府では、京都府歯科医師会が行う「歯科衛生士再就職支援事業」という制度があり、いちど離職した歯科衛生士がもういちど資格を活かし、就職しやすくするための支援制度です。再就職に不安をもつ歯科衛生士に対し、スムーズに歯科業界へ復帰するために全面的にサポートするもので、京都府内の歯科医院へ就職を希望した歯科衛生士が必要事項を登録後に受ける事ができるサービスとして情報の収集、再就職の相談、研究会への参加など、京都府の歯科医師会や歯科医療従事者などの紹介を経て、再就職をサポートするといった内容です。
松山市では、就職マッチングサポートというシステムを導入しており、歯科衛生士として就職、復職を望む人と、歯科衛生士を募集する歯科医院との出会いとスムーズな就職をサポートする支援サービスを行なっています。また知識や技術向上のための定期的な無料イベントの開催など、歯科衛生士の就職を全面的に応援するシステムがあります。
このように、全国ほとんどの地方自治体が独自の歯科衛生士に対するサポートシステムを整えています。

インターネットを通じた支援制度も

歯科医院に就職するにあたり、求人情報誌やインターネットでは様々な条件が記載されています。給与面、福利厚生、土日休みなどの情報が載せられていても、実際は明確な雇用条件や就業規則を提示する歯科医院はほとんどなく、大部分が口頭による説明だけで現実とかなりかけ離れた環境に置かれている状況です。このような部分も、歯科衛生士が就職しにくい理由となっているようです。
このような歯科衛生士の就職状況をサポートする組織として、「DHマイライフ応援宣言」というシステムが存在します。歯科衛生士の雇用や育成に力を入れ、歯科衛生士が就職しやすく、働きやすい環境を作り出すことに賛同したプロジェクトが運営されています。他の求人サイトと大きく違うところは、ただ求人情報を載せるだけでなく、歯科業界に精通したコンサルタントがこのプロジェクトに賛同する全国の歯科医院の院長と話し合い、一定の基準を満たした歯科医院のみを掲載していることです。就職先の選び方や一医療人としての在り方、コンサルタントによる無料カウンセリングなど、ネットを通じて就職だけでなく、セミナー情報やスキルアップ動画の掲載など、歯科衛生士をあらゆる面からサポートしていることが大きな特徴です。

今、歯科衛生士を取り巻く環境は決して恵まれているとは言えない中、様々な歯科衛生士の就職に関する支援サービスなどの取り組みが行なわれ、慢性的に不足している歯科衛生士が気持ちよく働けるためのサービスが多方面に渡って行なわれています。歯科衛生士が担う業務は、人々の健康を口腔内から守り、サポートをするためにとても重要なものです。このためにも歯科業界が一丸となり、歯科衛生士が就職しやすい環境づくりや支援する体制をより一層整えていく必要があるでしょう。